日本男子のツアー２０１０年５月２日に名古屋ＧＣ和合Ｃで最終日が行われた「中日クラウンズ最終日」（６５４５ヤード、パー７０）は、あのハニカミ王子が“歴史的”な優勝を果たした。

前人未到の金字塔‐。ハニカミ王子こと石川遼選手（１８歳）＝パナソニック＝が、世界の主要ツアーで新記録となる「５８」（前半２８、後半３０）をマークして、大逆転優勝を飾った。首位と６打差の１８位からスタートした石川は１２バーディー、ボギーなしでラウンド。通算１３ア

ンダーに伸ばし、２位に５打差をつけて今季初優勝、ツアー通算７勝目を手にした。バーディー数で日本記録に並び、生涯獲得賞金も“世界最速”で３億円を突破。記録ずくめの歴史的勝利となった。

ゴルフ界の歴史に残る大逆転劇を演じた１８歳の背中には、確かに“ゴルフの神様”が降臨していた。神がかりの１２バーディーで「５８」をマーク。高校１年の時に出した自身のベストスコア６２はもちろん、世界主要ツアーで倉本昌弘ら４人が持つ５９を抜き、世界最少ストロークを更新。「未知の世界に足を踏み入れたラウンドだった。この難しい和合コースで達成できて本当に幸せ」。晴れやかな笑顔が輝いた。

首位と６打差からのスタート。１、２番の連続バーディーで滑り出したが、まだまだ「逆転」の２文字ははるか彼方だった。スイッチが入ったのは４、５番で連続バーディーを奪った後の６番だった。グリーン左ラフから約１５ヤードを沈めてチップインバーディー。「あれで自分の中で何かが変わった。きょうはツイていると感じた」。

前半を７バーディー、ノーボギーの２８でターンすると、１万５０００人を超える大ギャラリーの「５０台で回れ！！」「もっと攻めろ！！」という大声援に後押しされ、後半も５バーディー、ノーボギーの３０でプレー。最終１８番で４メートルのバーディーパットを外し、「唯一の心残り。打ち切れなかった」と悔やんだが、それ以外は「すべてのショットとパットに自信を持って打てた。ミスするイメージがまったくなくて、最後まで平常心でプレーできた。これを“ゾーンに入った”というのかもしれない」と話した。

難コースに苦しみ、初日から３日間スコアを伸ばしきれなかった。「そんな消極的なパットばかり打っていたら、お前のファンはどんどん減っていくぞ」。前夜、父・勝美氏（５３）から、ついにカミナリが落ちた。「アグレッシブに攻めるのが僕のスタイル。大切なことを忘れていた」。父の厳しい言葉に発奮した石川は、身上の攻めゴルフを改めて心に刻み、金字塔を打ち立てた。

ハーフ２８、１ラウンド１２バーディーは日本タイ記録だ。「夢の中でプレーしている気分だった。こんなにゴルフが楽しいと感じたのは、マンシングの時以来」。１５歳でアマチュア優勝した０７年のマンシングウェアＫＳＢカップ。石川の原点ともいえる記憶が鮮やかによみがえった。

賞金王として迎えた今季。マスターズで涙の予選落ちを喫し、国内開幕戦の東建ホームメイト杯でも決勝ラウンドに進めなかったが、開幕３戦目で初Ｖを挙げた。「いいスタートが切れた。今年は昨年以上に充実したシーズンになる自信はある。自分の成長を何度感じることができるか挑戦していきたい」。“世界記録”も通過点。１８歳の進化は止まらない。
 

他のプロゴルファーらのコメント

▼マークセン　ほとんどが短いパット。５０台は初めて見た。アンビリバボー。（石川と同組で回り）

▼日本ゴルフツアー機構小泉直会長　本当に素晴らしいの一言に尽きますね。平素の努力のたまものが一気に出たのでしょう。これからの活躍と

男子ツアーを盛り上げてくれることを期待しています。表彰も検討していきたい。

▼古閑美保　開幕戦は予選落ちしてるのに凄いっスよねえ。あの子は何やるか分からないんですよね。だから面白いんだと思う。

▼横峯さくら　本当ですか？凄いですね。全部のプレーがかみ合って、プラス運がないと出せないですよ。